20本の「スパゲッティ(乾麺)」を使って、どれほど高い「塔」を作れるか?
制限時間は18分。細く折れやすいスパゲッティを「テープや紐」で丁寧に繋げながら、パズルのように高い高い塔へと仕立て上げてゆく。
そして、「マシュマロ」をその頂きに載せれば、見事完成。
子供の遊びのようなこのゲームは、「マシュマロ・チャレンジ」と呼ばれるものだ(考案者:ピーター・スキルマン氏)。
4人一組で行うことから、このゲームにより「チーム・ワーク」を学べるということで、企業の研修などでも盛んに取り入れられているのだという。
この「マシュマロ・チャレンジ」を世界中で70回ほど開催したという、トム・ウージェック氏。
彼の見た最高の高さは「99cm」。平均では「50cm」とのことだ。
「簡単そうで難しい。迅速な連携プレーが必要です」
ウージェック氏が見てきた中で、最も「成績が悪かったチーム」はと言えば、「ビジネス・スクールの新卒者」だった。彼らにやらせると、平均の半分にも満たない高さで潰えてしまう。
彼らは「正しい計画を立てろ」と教えられているため、お互いに話しあって方向性を決め、図を描いて構想を練る。そして、綿密な組立作業に大半の時間を費やす。
その計画通りの見事な塔は、「どうだ(Ta-Da)!」と言わんばかり。
ところが、いざマシュマロを自慢の塔のてっぺんに載せてみると…、マシュマロの重みで、その塔はあえなく倒壊(スパゲッティによるか細い骨組みにとって、マシュマロは想像以上の重みを持つようだ)。
この瞬間、「どうだ(Ta-Da)!」が、「あ~あ(Oh-Oh)…」に変わってしまう…。作品への陶酔が一気に冷める瞬間でもある。
もう一度やり直すにも、制限時間の最後ギリギリでマシュマロを載せているために、もう時間切れブッブー。
一方、ビジネス・スクールの新卒者たちよりも立派な塔を作り上げるは、「幼稚園の新卒者たち」。
彼らは、大人たちの平均よりも、ずっと高い塔をスルスルと組み上げてしまう。しかも、その塔は高いだけではなく、その形もユニークなものばかり。
ビジネス・スクールで学んでいない園児たちに「確たる計画」はない。ただ自由奔放にスパゲッティを繋げていく。
そのため、「試作品」の数が大人たちよりも圧倒的に多い。そして、大人たちが「最後」に載せたがるマシュマロも、園児たちは「しょっちゅう」試作品の上に載せたがる。
園児たちのこうした幾多の試行錯誤は、結果的に高い塔を生み出すことになる。一発勝負の素晴らしい計画で敗れがちなビジネス・スクールの生徒たちとは対照的に…。
園児たちの手法は、ちまたで話題の「リーン・スタートアップ」と呼ばれるものにも酷似している。
※この「リーン(lean)」という言葉は、「痩せた・細い・薄い」などの意味で、その反対語は「太った(fat)」、「厚い(thin)」、「濃厚な(rich)」などとなる。
一方、ビジネス・スクールの生徒たちの手法は、リーンとは反対のリッチでファットな計画だったわけだ。
園児たちの手法は、軽快であるために、常に変更が可能である。
ところが、ビジネス・スクールの生徒たちの計画は、綿密に構築されすぎているために、その変更を迫られた時には、一からのやり直しとなってしまう。とてもじゃないが、18分という制限時間内に新たな計画は組めなくなってしまうのだ。
インターネットの世界は、まさにリーン・スタートアップが最適だとされている。
完璧な完成品を提示して誰にも関心を持たれないよりは、未完成なアイディアをどんどん提示していって、ユーザーの反応に対応していくほうが効率が良いというわけだ。
園児たちがしょっちゅうマシュマロを載せるように、随時アイディアの可能性を試してみたほうが、成功する方向性を見出し易い。
世界最高企業のグーグルやアップルでさえ、常時アップデートを繰り返しているのだから。
ビジネス・スクールの生徒たちは、作業中に「どーだ(Ta-Da)!」と心の中で繰り返しているのかもしれない。
一方の園児たちは、「あ~あ(Oh-Oh)…」の連続である。
ところが、両者の「どーだ!」と「あ~あ…」は、最終的には入れ替わってしまう。園児たちの「あ~あ…」は、最後の最後で「どーだ!」に大逆転するのだ。
昔々の中国。
「漢」という400年に及ぶ大帝国を築き上げた「劉邦」という人物は、それはそれは「戦に弱かった」のだという。
一方、同時代に生きた「項羽」という武将はメッポウ強い。劉邦は全く刃が立たず、項羽に負けっ放しであった。
しかし、99回負け続けた劉邦は、最後の最後で一回だけ項羽に勝ってしまう。その結果、劉邦は、かの大帝国を築き上げたのだ。
農民から裸一貫で立ち上がった劉邦は、古代のリーン・スタートアップ。負けはしたが死にはしなかった劉邦。99回の試行錯誤の末、最後の最後で道を開いたのである。
「あ~あ…」は、「どーだ!」にも変わりうる。
マシュマロにチャレンジし続ける限り、ビジネス・スクールの生徒たちも高い塔を作り上げていくようになる。
ただ、賞金がかかると、その成功率はグンと下がってしまうようではあるのだが…。
出典:
TED Talkトム・ウージェック:塔を建て、チームを作る
スーパープレゼンテーション こうして発明品はつくられる
0 件のコメント:
コメントを投稿